小型衛星について
 近年小型衛星の開発が盛んになっています。小型衛星で最も小さいものは、10cm立方の超小型衛星と呼ばれるもので、開発費用は数百万円程度と、大型の衛星に比べると安価です。そのため、大学や発展途上国の宇宙機関、さらにはアマチュアの団体など、これまで宇宙開発とは遠い存在だった団体が小型衛星の開発に名乗りを上げるようになりました。そして、小型衛星の多くはアマチュア無線帯の電波で地球と交信していて、アマチュア無線家に電波受信の協力を求めています。JAXAは現在J-SSODという国際宇宙ステーションに取り付けられた小型衛星放出機構を民間に提供しており、10cm立法サイズ(1U)の衛星であれば1機300万円で放出することができます。超小型衛星には1Uサイズ(10cm×10cm×10cm)、2Uサイズ(10cm×10cm×20cm)、3Uサイズ(10cm×10cm×30cm)があります。超小型衛星の目的はさまざまですが、搭載したカメラによる地上画像の取得、大気の観測、アマチュア無線帯を使った地上局との交信、科学教育などが主な目的となっています。超小型衛星は商用目的というよりは、大学、アマチュア団体、発展途上国の宇宙開発参加へのステップという位置づけになっています。超小型衛星は、申請の都合上、アマチュア無線帯の電波を発信していることが多く、無線機を持っていれば近くを通過する超小型衛星のビーコン(電波)を受信することができます。

 1Uサイズ超小型衛星(九州工業大学の鳳龍4号)

小型衛星の探し方

 現在運用している小型衛星とその周波数は下記のサイトから見ることができます。

小型衛星とその周波数一覧

 また、日本近辺を通過する小型衛星はJAMSATのサイトから探すことができます。まず、以下のような日本地図が表示されるので、観測地点の近くの丸印をクリックします。



すると、以下のような表が現れます。



見たい衛星をクリックします。ここではHORYU-4という衛星をクリックしてみます。すると以下のようなデータが現れます。



上から2行目の"Satellite #41340 : HORYU 4"というのは、衛星名がHORYU 4で、衛星の番号が#41340ということを示しています。さらに下を見ると、

というのがあります。これは、2017年8月28日月曜日、3時20分40秒に地平線から衛星が現れ、3時23分02秒に最も高い位置に来て、3時25分28秒に地平線に衛星が沈むということを示しています。ここでPeak Elevの欄は1.8となっていますので、最高点の仰角は1.8°、つまり地平線すれすれということになります。衛星はなるべく真上を通っている方が受信しやすいので、このPeak Elevの値が高い衛星を狙うといいでしょう。

また、衛星から発信される電波の周波数は、例えばN2YO.comというサイトから調べることができます。このサイトの"Find a satellite..."と記載されているところに衛星の名前や番号(NORAD ID)を入力すると、以下のような情報が現れます。ここではXW-2Cという衛星を表示しています。衛星から定常的に発信される電波は"Beacon"という周波数で、ここでは145.770MHzと145.790MHzの2つの周波数です。Uplinkは地上局から衛星に向けて発信する周波数で、Downlinkは衛星から地上局に向けて発信される周波数です。Uplinkの周波数で衛星に向けて何らかの信号を送ると、別の地上局でDownlinkの周波数でその信号を受信できるらしいです。



 さらに、衛星のリアルタイムの位置はgooglesattrackで見ることができます。


 

まず、左上の虫眼鏡のアイコンをクリックすると、上のような画面が現れます。左上のタブからCatalog Numberを選択した場合、衛星に付けられた5桁の番号を入力すると衛星を選択することができます。また、Satellite Nameを選択すると、衛星の英語名を直接入力することで衛星を選択できます。また、最近打ち上げられた衛星で、まだ番号が割り振られていない衛星は、Newest TLEsから選択することができます。

アンテナについて
衛星の電波受信には指向性の高い八木アンテナを使うことが多いです。下の写真は私が使っているアンテナで、144MHz帯の電波受信用の5エレ八木アンテナ(奥側)と430MHz帯の電波受信用の10エレ八木アンテナ(手前側)をローテーターに取り付けています。ローテーターは八重洲無線のG-5500を使いました。G-5500は水平方向と仰角方向の2軸に回転させることができるため、アンテナを全ての方向に向けることができます。下の写真は一例ですが、全ての偏波方向の電波を捕らえるには、八木アンテナをクロス型にするといいでしょう。また、ローテーターが回転するときにケーブル類が絡まないように工夫する必要があります。



一方、NOAAという気象衛星の受信には円偏波受信用のQFHアンテナを使うと良いです。下の写真はナガラ電子工業のQFHアンテナを私の地上局に建てたものです。八木アンテナが特定の方向に強い指向性があるのに対し、QFHアンテナは無指向性なので、アンテナを衛星の方向に向ける必要はありません。



衛星追尾ソフト
 地上局の位置から見た衛星の位置を自動的に計算するソフトとしてcalsat32が無料で入手できます。calsat32は誰が作成したのかわかりませんが、JAMSATの会員であるという情報があります。ダウンロードは以下のサイトからできます。
calsat32のダウンロード

calsat32を起動すると以下のような画面が表示されます。ここでは、九州工業大学が開発したBIRDS-2という3機の衛星(UiTMSat1, Maya1, Bhutan1)を表示しています。UiTMSat1を選択すると下側に衛星の出現時間が表示されます。「AOS」は衛星が地平線に現れる時間、「Max El」は衛星が最高点に到達する時間、「LOS」は衛星が地平線に沈む時間を表しています。注意すべき点は、衛星の軌道情報は時々刻々と変化しているので常に更新しないといけないということです。古いデータのままだと衛星の位置が本来の場所と全然違う位置に表示されてしまいます。データを更新するには、「ファイル」メニューから「軌道要素ファイルの更新」を選択し、「データ取得」をクリックしてデータを取得した後、「新規更新」、「追加更新」、「既存更新」のいずれかをクリックします。データを更新する場合、パソコンがインターネットに接続されている必要があります。詳細は「ヘルプ」メニューの「CALSAT32のオンライン利用ガイド」からCALSAT32_HELP.pdfをダウンロードし、そちらを参照してください。


(文章作成:角地雅信)